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  • 発電する紙/糸 ~カーボンナノチューブ複合紙/糸の最前線~

    2019.04.8カテゴリー:

    研究室から最新の発明紹介

    時代をリードする最先端の発明が行われている大学の研究室。

    今この瞬間も、私たちの数年後の生活を豊かにする発明が産み出されているかもしれません。

    この「研究室から最新の発明紹介」コンテンツでは、

    我々みなとみらい特許事務所と同じく、

    横浜に本拠地を構える大学研究室の最新の発明を実際に取材し、

    対談形式でご紹介させていただきます。

    特に、本記事をご覧いただいた企業の皆様に、企画・製品化のきっかけや

    ヒントにつながるようなコンテンツにしていきたいと考えている次第です。

    【発明の名称、代表発明者】

    熱電発電デバイスおよび熱輸送デバイス

    国立大学法人横浜国立大学 大学院 工学研究院 

    准教授 大矢 剛嗣(オオヤ タカヒデ) 氏

     

    発電する紙/糸 家具など応用範囲も無限大。

    辻田:

    本日はお忙しい中、ありがとうございます。

    早速ですが、大矢准教授が今回、特許出願された熱電発電デバイスについて、

    どんな発明か、お教えいただけますでしょうか。

     

    大矢:

    はい、こちらこそありがとうございます。

    今回の発明は、カーボンナノチューブ(以下、CNT)と、糸や紙とを複合させたものに温度差をかけることによって、発電する仕組みの物品になります。

    CNTを用いたデバイスは、熱電発電の他にも、いろいろありまして、CNTを紙や糸に混ぜたものがトランジスタになったり、指紋のような認証ができる紙となったり、電磁波シールドとなる紙になったりもします。

    これらの「CNT複合紙/複合糸」については、昨年にSEMICON®JAPANに出展し、多くの方に注目いただきました。

     

    辻田:

    今までただの紙だったものに様々な特性をもたせることができるようになるんですね。

     

    大矢:

    はい、その通りです。

    これらを可能になったのは、技術革新によって、従来の異なる性質のCNTが一緒くたになっていたものから、所望のCNTを選んで使用できるようになったことが要因として大きいですね。

     

    辻田:

    実際のところ、今回の発明である「熱電発電デバイスおよび熱輸送デバイス」に限らず、

    CNT複合紙/複合糸の有用性については、どのようにお考えなのでしょうか。

     

    大矢:

    私が思う限りでは、有用性は高いと考えています。

    紙や糸というのは、そもそも、私たちの身の回りにあるものなんですね。

    いまこの部屋にも、紙や糸というものもたくさんあります。

    なので、そうしたものを使うことで、例えばIoT社会にも沿うものとなります。

    また、紙すきや製糸というのも、既に技術が確立されたものがありますので、

    低コストで広く使ってもらえる、有用な技術になるのではないか、と考えております。

     

    名刺サイズの複合紙ならば、1~2円程度のコストで製造できますし、

    複合紙については、紙すきなどの和紙製造方法、

    複合糸については、染め上げの技法をベースにしているため、

    日本ならではの材料であることからも、親しまれやすいと考えております。

     

    辻田:

    たしかにそうですね。

    お話を聞いていると、実用化のイメージがかなり固まっているような印象を受けますが、

    すでに、実用化に向けて、どこかの企業と具体的な取り組みをしていたりするのでしょうか。

     

    大矢:

    いえ、過去に共同研究を行ったりしたことはありましたが、

    現在は、具体的に共同研究として取り組んでいるところはないですね。

    ただ、今回の発明に限らず、CNT複合紙/複合糸については、お問い合わせやご相談レベルでは、すでに何件かいただいております。

    この研究では、既存の紙や糸にCNTを混ぜておりますが、

    材料レベルでの実用化ということであれば、製紙メーカーなどとの連携が望ましいですし、

    一方、実デバイスにする上では、デバイスメーカーとの連携が望ましいです。

    紙や糸というのは身の回りの環境にありふれたものなので、

    業種に限らず、多くの企業様と連携できる可能性があると考えています。

    例えばテーブルなどの家具などでも、CNT複合材のデバイスが利用できる場所は多くあるように思います。

     

    辻田:

    非常に有望な技術ですね。

    実際にこれが製品化につながり、世に出るそのときを楽しみにしています。

    本日は貴重なお時間ありがとうございました。

     

     

     

    大矢研究室について

    (横浜国立大学 大学院理工学府 数物・電子情報系理工学専攻 応用物理分野/情報システム分野/電気電子ネットワーク分野 横浜国立大学 理工学部 数物・電子情報系学科 電子情報システム教育プログラム)

    ※HPより引用 http://www.ece.ynu.ac.jp/research-oyalab.html

    本研究室では一風変わったアプローチから“斬新な”ナノ材料やナノデバイスの創生・応用展開・システム構築を目指し2本柱で研究を進めています。一つ目の柱は「自然界に学んだ情報処理のナノデバイスへの実装」であり、もう一つは「伝統技術との融合によるナノ複合材料の開発と応用展開」です。

    自然界ではあらゆるものが誰の手も借りずその形をつくりあげ、また様々なものが相互に影響し合うことで高度な情報処理を行っていると考えられます。このように自然界で日々起こっている物理現象を電子デバイス(特にナノデバイス)の物理と対応付けをすることで既存の集積回路とは全く違う、かつ「そのデバイスだからこそ」と言えるような新情報処理デバイスを生み出すことが可能となります。

    また、斬新なナノ複合材料の研究も進めています。ここではナノテク材料としてカーボンナノチューブ(CNT)に着目をし、これを利用した複合材料の開発と応用展開を進めています。CNTは多機能で非常に有用ではありますが使用するには少し工夫が必要です。本研究室では(例えば)日本伝統の和紙作製技術を利用し、紙とCNTを混ぜ複合紙(CNT複合紙)もしくは糸とCNTを複合しCNT複合糸(布)とすることでCNTの新たな応用分野を開拓しています。一例として、「紙のトランジスタ」が構成可能で、紙状でありながらトランジスタとしての動作をすることを確認しています。

     

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