弁理士によるコラム◇除菌関連グッズの商標-拒絶されないためには?◇
みなとみらい特許事務所、弁理士の中川でございます。
いまさら聞けない「商標権の効力」と「商標の審査」について。
皆さんが「商標登録しよう」と、お考えになる理由は千差万別ですが、
その中に、「他人(競合他社など)にわが社のネーミングをマネされたくない!」
というものがあると思います。
他人にマネさせないようにする、という効力は、商標権のもつ本質的な効力といえます。
商標権は、特許権などと同じく「独占排他権」と呼ばれています。
実際、商標の権利者は、
①登録商標及び商品(サービス)と「同一の範囲」で商標を独占的に使用できるだけでなく、
②登録商標と「類似する商標」及び類似する商品(サービス)についても、
他人の無断使用を排除できるのです。
これは思った以上に強力な権利でして、第三者が、勝手に登録商標や、
これと似た商標を使用していた場合、
権利者は、差止請求(商標法36条)、損害賠償請求(民法709条)等を
行使する事が可能です。しかしながら、商標権は非常に強い効力を認められているがために、
登録にあたっては、国(具体的には、特許庁の商標審査官)による
厳格な審査を受けることになるのです。最近、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、
弊所でも、除菌・消毒関連グッズの商標に関する出願の相談
を受ける機会が増えています。ここで、過去の特許庁の審査例をひも解くと、
たとえば、下記に示す商標は、同じような理由で、いずれも商標登録が認められていません。「除菌マスク」「ウイルス除菌」「ウィルス・ブロックマスク」
これらのような、なんらかの意味で商品等の特性を記述するにとどまる商標
(いわゆる「記述的商標」)は、取引上誰でも使用する必要があるので、
一人の権利者に独占を認めるのは妥当ではない、と考えられています。
また、こうした記述的な商標は、すでに一般的に使用されていたり、
あるいは、将来、一般的に使用され得るものなので、
多くの場合、「商品やサービスを区別する目印として機能し得ない」との理由で、
商標登録することができないのです(=やや難しい言い回しですが、
我々の業界では、こうした商標を「識別力がない商標」と呼んでいます)。
一般的には、商品・サービス内容をそのまま表したネーミングよりも、
ひとひねり加えたものの方が、オリジナル性は増し、
他人の商品等と差別化しやすい、とされます。
それだけでなく、商標登録の可能性を高める観点からも、
この「ひとひねり」が肝であることを、おわかりいただければ幸いです。
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