弁理士が教える 特許実務Q&A~過去の自社の特許出願が拒絶理由に引用される?~
【質 問】
特許出願を行って、特許庁の審査を受けたところ、その昔に自分が発明し、
自分の会社で特許出願していたものが、拒絶理由の先行技術に引用されました。
自分が過去に行った発明、過去の自社の特許出願の存在を根拠にして、
「特許を与えることができない」とされるのは納得できません。【回 答】
原則として、特許権は、世の中に公開されていない、新しい発明について付与される権利です。
特許法には、特許の成立要件として、発明が先行技術と比較して新しいものであること(新規性)、
及び先行技術から容易に想到されないものであること(進歩性)を要すると規定されています。これらの規定は、公開された先行技術が「自身の特許出願」に係るものであっても、
適用除外とはなりません。つまり、過去の自身の特許出願が、すでに公開されたものである場合は、
過去の出願を根拠として、後の特許出願が拒絶されることは十分に考えられます。■なぜ発明を公開してしまうと、特許を受けることができないのか?
その理由として、そもそも特許権が「発明を公開する代償として付与される独占排他権」
であることが挙げられます。特許法には、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に
寄与することを目的とする」ことが定められています(特許法第1条)。つまり、未公開の発明が公開されるからこそ、今まで知られていなかった発明が利用され、
産業の発達が促されるのであり、すでに公開された発明を再び公開しても、
当該法目的が達成されるとはいえません。このような理由から、例え自身の過去の出願であっても、すでに公開されたものは、
一般世間に開示された技術とみなされ、拒絶理由として引用される可能性があるのです。
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